三線と箏、並行して修練しながら思うこと

三線を始めたのは2016年、箏は2018年。同時並行で学んできたから見えたことをメモしていきます。(記事は随時追加していましたが、6.で終了します)

1. お金の問題

2つの楽器を弾くことを日常的に楽しんでいるので、利点を多く挙げることになりますが、まずはちょっとたいへんなところから。筆頭は出費です。わたしの場合、修行期間が重なったため、楽器の購入やコンクール受験を同時期に行ったので、その期間の出費はなかなかのものでした。

三線は安いもので1万円台、上は天井しらず、という感じです。わたしは体験から2ヶ月近く、師匠にお借りしていましたが、偶然、沖縄に行く機会が舞い込み、職人さんのお店で相談しながら購入しました。初心者に扱いやすく見た目もよい二重張りの三線で、ケースや爪など一式込みで8万円ほどだったと記憶しています。

箏は新品だと安くても20〜30万円と聞いていたので、はなから新品は検討しませんでした。ヤフオクなどで中古を入手するのを勧められましたが、初心者がうまく選べるものではないので、姉弟子に一式を実費で譲っていただきました。石垣島からの送料込みで、一式8万円ぐらいでした。ただし、箏は小物がいろいろありまして、一式購入後も細かく出費が続きました。

そこにコンクールの受験料や石垣島への渡航費。ざっと見積もって1回行くのに10万円弱はなんだかんだでかかります。

いまは三線2丁と箏3面を所持しています。どちらも古くからの楽器だからでしょうか、自分で扱える部分が多いため、メンテナンスで職人さんに頼るほどのことはめったになく、維持費は少額です。それでも三線のカラクイの調整や箏の弦の張り直しなどでは職人さんのお世話になり、その際には出費があります。

それと、もちろんレッスン料がかかります。でも東京での習い事ととしては、安価なほうではないかと思います。


2. 時間配分

2つの楽器を弾くということは、2種類の練習が必要なので、練習時間は単純に計算して2倍必要になります。箏を始める前は、1日1〜2時間の三線の練習が日課でしたが、さすがに仕事をしながら両楽器で毎日2〜4時間も練習に割くことはできないため、時間は増やさずに効率を上げるよう努力しています。

当然ながら、本番が迫っているほうの楽器の練習時間を長くしています。

1回の舞台で両方を弾く場合は、朝は箏の練習をし、日中働いて、夜に三線の練習をすることが多いです。伴奏の演目が中心の箏は声出ししないで済むことと、音色のやさしさが朝向きのように感じます。一方三線は、声をしっかり出して練習したいので、朝と比べると声が出やすく、ご近所もまだ起きている夜の時間帯に練習するようにしています。

当面、舞台がない時期は、朝練はせずに夜のみにして、おおむね三線の日、箏の日と交互に練習しています。

最近の練習は1日に30分〜1時間ぐらいです。あまりに長く練習すると喉や体に負担ですが、朝にしろ夜にしろ、1時間程度でしたらリラックス効果のほうが大きいと感じます。練習したいあまり、できるだけ残業しないようになりました。楽器を始めて一番変わったところはここかもしれません。


3. 三線が先

どちらを先に始めたらよいかと尋ねられたら、一も二もなく、三線とお答えしています。わたしが箏を始めた際も、三線が先行していたから入門のハードルが下がったところがありました。

八重山の筝曲のコンクールのために、「二段」「四段」「六段」という琉球筝曲の独奏曲を課題曲として学ばなければなりませんが、やはり箏の主力は唄三線の伴奏です。唄を確実に知っているほど、箏を弾きやすいのは間違いないです。

演奏技法としては、三線よりも箏のほうが手数が多く、複雑です。三線の究極のシンプルさゆえの難しさもありますが、初級者のうちは箏のほうが格段に難しいと言えます。箏で唄を覚えることも可能ですが、弾き手の複雑さに気を取られがちになりますので、それよりは三線で唄を覚えるほうが容易です。

以前に舞台でほとんど唄えない曲の箏伴奏をしたことがあり、譜面を見ながら弾いたのですが、その唄の特徴をつかんでいないのでただ譜面通りに弾くだけで精一杯になりました。途中でどこを弾いているのか迷うこともありました。まったくもっていい演奏ができませんでしたし、観客にも合奏した方々にも申し訳なく思いました。

以来わたしは、箏伴奏を頼まれたときには、その曲を三線で唄い込んでから、箏の練習に着手するようになりました。自分なりに唄を解釈し、強弱の付け方や音のため方などを確認しておきます。すると、たとえば独唱伴奏で、わたしとは解釈が違う唄い手に合わせるのだとしても、自分の解釈を軸に、ここは少しゆっくり、ここは意識的にきっちり箏を鳴らそう、などと調整が可能になります。

また、コンクールでも箏独唱はありますし、舞台でも箏独唱をしたり、唄三線の伴奏で箏を弾きつつ声で囃子を入れたり、という場面もあります。三線で唄をマスターしていれば、箏を弾きながら声を出すオファーにも応えやすくなります。

じつは、三線の人が唄に詰まってしまったときに、代わりに唄を支えるのは、箏伴奏者の役割です。三線の人が歌詞が出て来なくなっていたら、箏が小さな声で唄って三線の人が思い出す手助けをします。そのためには、つまり、箏奏者も歌詞やメロディーを覚えていなければなりません。

実際にはそうした危機はあまり訪れませんが、いつそういう場面に当たってしまうかはわかりませんので、常に心にとめておく必要はあります。「箏の人は唄えなくてもいい」といった意見を耳にすることもありますが、いざというときのために、弾きながら唄えるようにしておかなければいけないですし、同時にどんな危機の事態であっても、余裕を持って三線を引き立てることができるだけの演奏の技量を備えておくことが求められます。

唄を習熟するためにも、唄三線がどういう場面で緊張に陥ってしまうかを察知するためにも、自身が唄三線をしていることは有利にはたらきます。いろいろな意味でどちらを先に学ぶかといったら、三線をお勧めしています。楽器の価格や大きさも三線のほうが手軽ですしね。

*もちろん箏だけを専門にされている方には、その道のメソッドがあると思いますし、箏専門の方も多くいらっしゃいます。


4. 音源づくりができる

箏伴奏を仰せつかるのは、わりと間際ということが少なくありません。古典芸能なので、基本的にどの曲もできて当たり前でなければいけないのでしょうけれど、いついかなる時も準備万端ということは現実的にあり得ません。

曲目が決まってからも、キーの高さや歌持(前奏や後奏)を何回繰り返すかなどは、だいたいもっと後に決まります。その少し後になってから、練習用音源を送っていただいたり、リハーサルで録音してきたりして、本番に向けた自主練習が本格化します。

でも、そこまで待っていたら、暗譜が間に合わなくなってしまいます。そこで、曲目が決まり次第、練習に着手するのですが、こういうときこそ、唄三線をやっててよかったと思います。仮の練習用音源を自分で録音できるからです。

既存のCDなどの音源を使うこともありますが、曲の組み合わせや歌持の回数がちょうどいいものなど、まずありません。唄の解釈をおさらいしつつ仮音源を録音して、箏の練習を進めておき、本番に近い練習用音源が入手できたら本番用にチューニングする、という具合に練習を重ねます。


5. 音感が育つ

絶対音感の持ち主とか、聴いたら曲を再現できる人とか、ほんとうにうらやましいです。わたしは音感のセンスがまるでなく、三線を始めたばかりのころはかなり当惑しました。

三線の3本の弦(男弦・中弦・女弦)のうち、女弦を基本として、「調子笛」で音を合わせます。女弦を高いドとして、男弦は1オクターブ下のド、中弦はファに合わせるのが「本調子」ですが、男弦と中弦は自分の耳を頼りに合わせます。これが初心者のうちはなかなか合わないんですよね……。

さらに間の音は、弦の「勘所」を指で押さえて鳴らすのですが、なかなかピタッとした音が出せないのです。でも、耳を鍛えて正確な音を鳴らせるようになるのは、必要不可欠な修行であり、三線の師匠はチューナーの使用は禁止という考えでした。

三線であやふやな音階しか奏でられないまま、2年経って箏を始めました。箏の師匠はチューナーを使って正確な音を覚えなさい、というポリシーでした。箏は13弦もありますから、ズレていたらちぐはぐなメロディを記憶してしまいかねませんし、舞台前などにはもたもた準備してほかの人に迷惑をかけるわけにもいきません。

三線の男弦・中弦・女弦が、箏の八・十・巾に当たります(本調子の場合)。箏の調弦を通じてこの3音を把握できるようになり、間の音もチューナーを頼りに箏で身につけて、三線で再現できるように徐々に音感が鍛えられました。「耳を鍛える」というにはかなりズルをした感がありますが、結果良ければすべて良し、ということで大目に見てほしいです。

音感に優れた箏仲間を見てると、琴柱を動かして調弦する手際がよく、あの域まで達するとチューナーはいらないのかもしれないな、と思いますが、わたしは徒な夢は見ないで実直に着実に調弦をし続けたいと思います。


6. リズム感が育つ

わたしの音楽センスの足りなさを次々とカミングアウトしているようで恥ずかしいですが、正直なところ、昔からあまりリズム感が良くありません。

三線を弾きながら頭のなかで1拍ずつ正確に刻めればいいのですが、節回し正しく唄おうと気を取られると、リズムが疎かになりがちになります。師匠は、唄に思いを強く込めようとするとそこだけ遅くなるから気を付けるようにと言うのですが、わたしは思い込め以前に、節を細かく動かすところが1拍に収めきれずに間延びしてしまう傾向があります。

リズム感を含めて正確に節回しが再現できればいいのですが、それが可能なら、そもそもリズム感で悩みはしないです。

ところがこんなわたしでも、箏ではリズムが乱れにくいんです。箏は1拍だけでなく1/2拍や1/4拍も意識しないと弾けないために、1拍を分解して数える習慣がつくからだと思います。箏を弾いているときは、唄優先ではなく、自ずと弾き手を優先してリズムを刻んでいるようです。自分の唄や演奏を少し客観的に捉えられるようになりました。

3.でお話したように、唄自体は三線を弾きながら習得するのですが、その後、箏を弾きながら唄ってリズムを矯正し、また三線に戻ると、リズム感がマシになっています。

せっかく2種類の楽器を弾いているのですから、それぞれの特性を生かしながら学び、一方で効率よく習得したことを、もう一方に還元するなど、相乗効果が得られるように鍛錬できればいいなと思っています。

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