「7日間ブックカバーチャレンジ」に選んだ7冊

2020年5月23日から28日に、「7日間ブックカバーチャレンジ」としてFacebookに投稿したものを転載します。


(遅ればせながら)7日間ブックカバーチャレンジ
Day1

バトンは、去年まで会社を共同経営していた元相棒・安田知代さんから、素敵な呼びかけとともに受け取りました。

ブックカバーチャレンジ、他の方のを楽しく拝見しつつ、読書文化の普及云々(でんでん、じゃなく)ではあるのですが、外出したり会ったりを制限するなかでの、一種の生存確認のような、穏やかなご機嫌うかがいのような、そういうものとして、行末が気になっていました。

バトン疲れ、という言葉までできるほどこの手のことが流行し、かなり沈静化してきたのは、それなりに元気にコロナ禍のピークをやり過ごせた感を持つ人が多くなってきた証のように思います。一方で、この間、いつもと同じく、もしくはいつもより過酷になった現場で働き続けた人々、ジリジリと締め上げられるように日常と近未来の生活に不安を覚えるようになった人々、困っている人々のためにフットワーク軽く新たなことを始めた人々には、呑気な流行だった気がします。

ということで、バトンものの役割はひと段落したように思っているので、わたしはバトンを回しません。

わたしはインドアでコロナ禍をやり過ごした派なので、考えごとをする時間はたくさんありました。この経験を必ずわたしの転機にしようと思います(社会も変わる兆しがあるような、足りないような)。そこで、過去のわたしが転機に手にしていた本から7冊選びます。

『手仕事の日本』
柳宗悦著
1985年5月発行(元は1946年1月)
岩波書店

学生時代に民藝研究をしていましたので、この本限定ではないのですが、柳宗悦から学んだこと、柳宗悦を対照しながら考えたことは多いです。近代観、東アジア観、日本語観などなど。

いまはまた民藝について思うことが多いです。正しい民藝、美しい民藝は、日常の暮らしのなかにあるものであり、美しく作ろうなどという邪心を持たない無心の職人の手から生み出されたもの。かつて概念的にはふむふむと読んでいましたが、民謡の世界も似てるなあと、いましみじみ感じています。

7days #7bookcovers
BookCoverChallenge #day1


(遅ればせながら)7日間ブックカバーチャレンジ
Day2

『仏像のひみつ』
山本勉著/山口澄子イラスト
2006年6月発行
朝日出版社

社会人になって初めて就いた仕事が仏像調査でした。仏像はおろか、仏教も日本史も、高校までに習った程度の知識しか持ち合わせていなかったのですが、毎日毎日、仏像を眺め、測り、写真を撮り、場合によっては持ち上げて(抱き上げ、握手して)いるうちにのめり込み、半年間の仕事を終えてから、強力な趣味になりました。

当時は小難しい解説書ばかりで、いとうせいこう&みうらじゅんの『見仏記』が唯一画期的でした。その後、仏女たちが現れると急にカフェ本のようなお気軽なものが出てきて(著者たちはたぶんオタクなのですが)、学ぶところのない本が急増しました(失礼)。そのなかで『仏像のひみつ』は適切にポイントをおさえていて秀逸。

7days #7bookcovers
BookCoverChallenge #day2


(遅ればせながら)7日間ブックカバーチャレンジ
Day3

『赤ちゃんにおむつはいらない』
三砂ちづる編著
2009年8月発行
勁草書房

新聞記者だったころ、衝撃的だった取材がいくつかありました。おむつなし育児はその一つで、熱病にうかされたように調べたり読んだりして、実践している方を訪ねました(赤ちゃんがおしっこをしたいサインを発し、それに気づいたお母さんが赤ちゃんを小さな便器に構え、おしっこしているところを見た。驚いた)。

近代以降、病気や筋力アップ、美容など、身体の仕組みが解明される一方だと思っていたのに、本来的な機能を忘れてしまっているなんて。しかも解明される機能も、忘却される機能も、資本が儲かるかどうかに規定されている。

反省と共感で深く感じ入り、この後、具合が悪くなってすぐに市販薬で抑える習性を改め、縮毛矯正するのをやめ、布ナプキンにしたり、お灸を勉強したり。いわゆる「身体の声を聞く」ようになりました。

7days #7bookcovers
BookCoverChallenge #day3


(遅ればせながら)7日間ブックカバーチャレンジ
Day4

『おばあさんになるなんて』
神沢利子著
1999年8月発行
晶文社

新聞記者時代は、いまからは想像できないほど社畜的に働いていました。ローカルな新聞でしたが硬派で視野が広く、環境問題や社会問題、市民活動を積極的に取り上げ、取材しながらたくさん学びました。でも、自分で実践できたことはほとんどありませんでした。仕事で手一杯で余力がなく、小器用に仕事を片付けることもできず、取材執筆していることと自分の生活のギャップが大きくて、やるせなさを感じていました。

そんなころに三鷹市在住の児童文学作家・神沢利子さんをインタビューしました。潔さに惚れました。その後、三鷹市民を中心に神沢さんの作品展をするプロジェクトに誘われ、あっさり参加を決めました。仕事と重なって体力的にはしんどかったけれど、一歩踏み出せば視界が広がることを教わりました。神沢さんや作品の魅力があったればこその参加でしたが、それ以上に開眼する機会でした。

『くまの子ウーフ』や『ふらいぱんじいさん』他、好きな作品は数々ありますが、今回はあえて、取材前に読んだエッセイをセレクトしました。

7days #7bookcovers
BookCoverChallenge #day4


(遅ればせながら)7日間ブックカバーチャレンジ
Day5

『貧乏人の逆襲! タダで生きる方法』
松本哉著
2008年6月発行
筑摩書房

東日本大震災で個人的には被害がなかったものの、先の見えなさと原発がどうなるのかが不安で心が塞いでいたとき、4月11日の高円寺デモでやっと呼吸できた気がしました。松本さんはそのデモの首謀者の一人。それ以前は噂程度でしか知らない存在でしたが、このデモをきっかけにぐっと惹きつけられ、このころご著書を続けて読みました。軽妙なタッチながら、思想に筋が通っています。

もちろん主としてお金のために働くのだけれど、世間はお金を無駄に使わせよう使わせようというプレッシャーに満ちていて、買いたいからオーバーワークする、オーバーワークのストレスを無駄遣いで解消しようとする(晴れないけど)、無駄なものが増える、捨ててまた買う、買える人が普通で買えない貧乏は自己責任、新品のゴミの山。そういうスパイラルに辟易していたし、震災を期に変わりたい・変えたいと願いました。

読んでめっちゃすっきりした。震災3年前に発行されていたのですけれど。

7days #7bookcovers
BookCoverChallenge #day5


(遅ればせながら)7日間ブックカバーチャレンジ
Day6

『昆虫食入門』
内山昭一著
2012年4月発行
平凡社

読めば一日で自己革命、
食べたら一足飛びで革命が起きる。
と、思います。

著者インタビューをするために手に取った本でしたが、価値観という名の思い込みががんらがんらと崩されました。いまでも虫は好きではないし、常時食べたいとも思っていませんが、読んで、食べて、解放されました。

一例をあげると、忌み嫌われるゴキブリも、江戸時代には害虫でなかったばかりでなく、かまどがあって暖かく食べ物が豊富な家に出ることから、裕福のあかしであったとのこと。世界には食用にしている地域も少なくなく、わたしも試食しました(もちろん養殖されたものです)。美味でした。

7days #7bookcovers
BookCoverChallenge #day6


(遅ればせながら)7日間ブックカバーチャレンジ
Day7

『八重山生活誌』
宮城文著
1972年:自費出版
1992年:沖縄タイムス社

ミンサー織の研究をしていた学生時代にも、4年前に八重山民謡を始めてからも、わたしが八重山を理解するためのバイブルの一つです。

なにしろ詳しい。702ページの大著、著者が81歳の時に出版、というだけでも十分驚きです。女性だから生活に価値があることを知っていて、その女性のなかでも高等教育を受けていたから記述できたという、この時代・この人だからこその著書だと思います。

詳しくはブログに書きました。

貴重で重要なこの本の存在に感謝しつつ、女性しか生活誌を書き得ない時代は過去のものになってほしいと心から思います。

7days #7bookcovers
BookCoverChallenge #day7

NO IMAGE
最新情報をチェックしよう!