八重山から遠く離れた土地で、八重山古典音楽の箏曲を演奏するには、楽器や小物を取り揃えるのにやや苦労があります。かく言うわたしも、まだ独力ですべてを揃えることはできません。情報をアップデートしながら、必要なものと入手の仕方を紹介します。
所持しているといい順番で紹介します。
必ず自分専用が必要なアイテム
爪・爪輪
八重山や琉球の箏曲では、日本ではメジャーな生田流や山田流とは形の違う爪を使用します。薄めで、爪先に丸みがあるのが特徴です。薄く四角く角張った生田流の角を落とした感じ、あるいはあまり先の尖ってない山田流を薄くした感じです。
生田流や山田流は新品の通販がありますし、中古品をヤフオクやメルカリでよく見かけますが、琉球の爪が出ていることはほぼありません。一度だけメルカリで購入できましたが、そのとき以外は姉弟子にお手配いただきました。
爪輪は和楽器屋さんでつけてもらうことができます。または、爪輪そのものは通販で購入できるので、自分のサイズがわかっていれば、自分でつけることも可能です。爪輪は革製で、中に和紙が仕込まれています。ボンドで和紙と爪を接着します。
爪輪は指にピタッと合わなければいけないので、基本的に貸し借りができません。自分用を持っていなければなりません。

爪輪には白色や赤色もありますが、八重山では黒系が基本
借りて始めて、早めに自分用を揃えたいもの
箏
箏の本体は、生田流や山田流と変わりません。新品はとても高額ですが、中古で十分です。中古の入手しやすさで言えば、八重山よりも東京のほうが有利かもしれません。昔は弾いていたけれどいまは誰も弾いていない箏がしまったままになっている、というお知り合いがいるといいですよね。ヤフオクやメルカリで購入するとしても、離島よりも送料が安くすみます。
箏はそんなにたくさん所持できるものではないので、購入するなら、舞台に出せるランクのものを勧めています。また後で触れますが、正式な舞台では箏に猫足を装着します。もともと猫足がセットになっていることが望ましいです。
一番の問題は弦です。琉球の箏曲では、日本の箏曲よりも弦を緩めに張ります。八重山の師匠や兄弟弟子たちは、那覇の専門店で張ってもらっているそうです。
東京近郊では、沖縄タウンのある鶴見の楽器屋で弦の張り替えができると聞いたことがあります。わたしは近所の和楽器屋に相談して、すでに琉球用に弦が張られている箏を参考に、張り直してもらいました。

中古でいいので、歪みがなく、できるだけ傷が少なく、舞台に出せる箏を1面は所持したいところ
琴柱
箏表面と弦の間に入れて、音の高さを調節するものです。たいていは14個セットになっています。12個は同じもの、それより一回り小さいサイズが1個、そして足の片方の形が違う、巾の弦専用の「巾柱」が1個です。全部で13弦ですから、巾柱と12個の琴柱を使うのが基本ですが、調弦をしていてどうしてもお隣の琴柱とぶつかってしまうケースがたまにあります。そうしたときには遠くに小さい琴柱をかませて琴柱同士がぶつからないようにします。
古くは象牙や木製もありましたが、いまはたいてい白っぽいプラスチック製です。ごくたまに割れることがあるので、消耗品だと考えていいです。
演奏会のときなど、数面分の琴柱が集まると、どれが誰のものなのかわからなくなりやすいので、一つ一つ名前を書きます。また四・六・九・斗の弦に立てる琴柱は、演奏中に急いで動かすこともあるので、観客には見えないところに目印をつけることもあります。
琴柱を収納する木箱は、鳥居台の代わりにできます(ただし、かなり低いです)。でも持ち歩きに向いていませんので、わたしは普段は化粧ポーチに琴柱をしまっています。

基本形12個と、小さい琴柱(上左)と巾柱(上右) 
巾柱(右端)は外側にひっかけて固定する
チューナー
13弦に琴柱を立てて演奏できるように調弦する際に使います。もちろん箏に慣れて、音を正確に把握できるまでに習熟し、もう不要だと思ったら使わなくてもいいです。ですが、早く演奏の準備をしたり、三線の人が高さを変更したときに急いで合わせたりするためには、あると便利です。
スマホのアプリでも代用可能ですが、アプリだと周りの音も拾ってしまうので、楽屋などざわざわした環境では使いにくいです。スマホアプリ同様に、周りの音をも拾ってしまうチューナーもあります。安価なものでいいのですが、相性のいいチューナーが見つかるまで、いくつか試すことになるかもしれません。

龍角をクリップで挟んで調弦します
鳥居台
演奏時に箏の龍角側を持ち上げるために使います。高さは8cmと11 cmがあるようです。わたしは11 cmのを使っていますが、それでも高さが足りないので、鳥居台と床の間に板を挟んでいます。
鳥居台は普段の練習用で、舞台では猫足と枕を使うのが正式ですが、鳥居台で演奏することもたまにあります。

朱色がメジャーですが、エンジや黒の鳥居台もあります
油単
普段、埃避けなどのために箏にかけておくものです。着物地や帯地でできています。お好きな素材や柄のものでいいと思いますが、箏を壁に立てかけて保管しているときに目につくのは油単ですので、部屋に合う柄を選んでみるのも一興です。

繊維が毛羽立たない絹製の油単は埃避けに最適
対面レッスンや演奏会用に欠かせないもの
カバー
レッスンや演奏会などのために、箏を持ち出す際にしまうものです。取っ手がついていて、片手で持ち上げられます。箏は大きいために、雨の日には必ず傘からはみ出てしまいます。そのためには、多少でも撥水加工が施されているほうが安心です。
箏をそのまま、もしくは油単をかけた状態でカバーに入れます。箏しか入りませんので、その他の小物は別の袋に入れて持ち歩きます。

左は油単のみ、右がカバーに入れたところ
猫足
舞台での演奏時に、箏に装着して使います。取り付け位置は龍角の裏側にあります。名前のとおり、猫の足のようなフォルムです。箏本体との接続部分に金具が付いており、回しながら装着して固定します。
古くは箏に接着したまま離れないものだったようで、いまでも中古品の箏で猫足が外れないものもみかけます。
もともと付属品に猫足が含まれている箏を入手するのが最良ですが、中古の箏で猫足が欠損しているものも多く見かけます。箏との接続部の金具の形が合わないケースが多いので、もし所持している箏に猫足がない場合には、猫足をあれこれ集めて、金具が合うものを探す必要があります。

金具が箏に合う猫足を探すのはひと苦労
枕
猫足の下に置いて高さを出す道具です。八重山の箏曲では黒(漆?)で各辺が朱色に縁取られたものを使います。高さが数種類あります。
中古市場にほとんど出回らないので、那覇の専門店で購入するのが近道だと思います。わたしは姉弟子についでの折に購入していただきました。
箏をお借りして演奏会に出る際も、枕だけは自分のものを持っていきます。

上部の緑色の凹みに猫足を乗せます
持っているとより快適な箏ライフグッズ
立奏台
椅子に座って箏を弾くときに箏を乗せるウマです。高い方に演奏側である龍角を、低い方に龍尾を載せます。立奏台本体は木製や金属製で、持ち運び用のカバーが付属する場合もあります。わたしは木製で、畳んだときに自立して壁に立てかける必要がないものを使用しています。
長時間練習するときには、立奏台を使うと膝が楽です。また演奏会で椅子に座って演奏する演出のときにも使用します。

持っていたら、練習中も活用したい立奏台
譜面台
正座しながら使える、見た目に和風の譜面台がありますが、舞台には暗譜して臨むことが多いですので、とくに専用の譜面台がなくても不便はないです。練習中は譜面を床に置いたり、台になりそうなものに置いたりしています。
高さを自在に変えられるプレーンな譜面台は、正座で使うにはやや高さがありますが、立奏台を使っての練習のときには、あると便利です。
チョーク
調弦の異なる数曲を連続で演奏する際は、後奏を弾いている間や曲間で、琴柱を動かします。演奏中なので、正確に琴柱を移動できたのか、確かめることはできません。できるだけ正しく琴柱を動かせるように、箏の本体に移動先の目安をチョークで書いておきます。
また、演目が立て込んでいて、調弦する時間が短い場合にも、次の曲目の琴柱の位置をチョークで書いておくことがあります。
チョークが折れたり、手や周りを汚したりするのを防ぐために、チョークにはカバーをつけておくといいです。

カバーに入れると手が汚れないので、演奏準備が楽になります